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2011年4月 7日 (木)

地縁の復活

B1110407 今週の金曜日、下の息子が合格した県立高校の入学式がある。入学時に提出する書類に保証人欄があったので、下の息子を車に乗せて義叔父宅を訪問した。叔母の家は隣が温泉旅館という、風光明媚な地にある。最初、長い間訪問しなかったことを詫びた後、息子の高校の保証書などに記入して戴く。お茶を飲みながら近状報告をしているうちに、いつしか話題が東日本大震災に及んだ。家庭菜園についても、義叔父に色々と尋ねてみた。義叔父の盆栽を育てる腕はプロ級であり、また近くに土地を借りて四季折々の野菜、特に葉茎菜類を中心に栽培している。

筆者が今回の大震災や福島原発をきっかけに食糧が高騰し、さらには食糧危機に陥る可能性もゼロではないという話をすると、ジャガイモなどの芋類、タマネギなどの茎菜類は、長期にわたって保存できるので買えば済む話、むしろ長くは保存できない葉茎菜類を栽培すれば良いだろうと義叔父は話してくれた。なるほど、食糧の高騰といった段階であれば義叔父の言う通りである。ただし、食糧危機という段階に突入したら、自分としてはジャガイモを中心に育てるつもりだ。今年の2月26日に放送された、NHKハイビジョン特集「じゃがいもが世界を変えた」を見ているだけに、なおさらである。

心配な点は食糧だけではない。放射能という目に見えぬ恐怖もある。

筆者の場合、福島原発が最悪中の最悪の事態に至った場合を想定し、いつでも遠方に避難できるように手荷物をまとめて枕元に置いてある。数日前、兄弟にその旨メールしたところ、「兄貴らしくない(考えすぎだ)」という返信が来た。さらに、「俺は仕事があるから、東京を出るわけにはいかない」とも付言してあった。ただ、筆者が弟に送ったメールには、藤田祐幸氏のビデオ「慚愧の思いで語り直す福島原発事故」を教えてあるので、いずれビデオに目を通して福島原発の現実を知ってくれることを願いたい。

B1110406 ともあれ、最悪の事態が起きる確率はゼロに近いとはいえ、決してゼロではないのだ。それなのに、最悪の事態を想定して準備あるいは行動するのが苦手な人が、日本には多いような気がする。今、神計らいで読んでいる『皇道 - 日本の精神文化 -』(葦津大成著 葦津事務所)の前書きにも、以下のような行があった。なるほどと思う。

「予想されるいくつかの可能性の中の安易な楽観的観測にすがり、最悪の場合への備えを考えない緊張感の欠如は、現代にも引き継がれている日本国の致命的欠陥でしょう」(『皇道 - 日本の精神文化 -』 p.9)

今すぐに住み慣れた土地を離れないと、今日明日の命にかかわるという、最悪中の最悪な事態になれば、仕事など放り出して即座に避難するのは当然だろうが、そこまでには至らない中程度の事態、すなわち近未来にガンになる確率がグーッと高まったといった事態なら、仕事があるから家に残るというのも、それはそれで自分で決めたことだから、傍からとやかくは言えない。ただし、中高年はともかく、これからという若者、特に乳幼児がいる若いご両親は我が子の将来のため、真剣に住み慣れた東日本の地を出ることを考えるべきではないのか。

ここで嬉しいニュースを一つ。放射能に汚染された東北や関東の大地から、大半の放射能を除去する術が存在する。それは、飯山一郎さんの長年積み上げてきたノウハウだ。例えば、4月4日の記事「放射能を除去する!簡便な水処理装置」を読んでみるとよい。小生も翻訳という仕事を続けながら、家族が食っていけるだけの食糧を作っていきたいと思っていたので、その点、関東平野は秩父山地の麓に住む者として、飯山さんの技術は心強い。
飯山一郎のLittleHP

ともあれ、親戚という血縁もさることながら、「遠い親戚より近くの他人」とあるように、地縁社会を見直し復活させる必要性を感じる今日この頃だ。『危機の構造』を著した故小室直樹は、アノミーが日本を崩壊させると嘆いておられたが、今回の大震災をきっかけに、筆者だけではなく他にも多くの人たちの中に、かつて共に助け合って生きていた昔の日本を見直し、とり戻そうとする動きが出てきている。そして、それこそ山浦嘉久氏が云うところの「近代化を放逐し、日本的霊性を取り戻さねばならない」を実現するための、幾つかある登山ルートの一つなのかもしれない。

以下は最新号の『ビッグコミックオリジナル』(4月20日号)で、「玄米せんせいの弁当箱」の一コマである。ここにも、震災をきっかけに日本再生の道を模索しようとする姿勢が読み取れるではないか。

Genmai01  Genmai02

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