“超”就職氷河期
大学生や高校生の子供を持つ家庭では、昨日(2010年11月13日)の各紙朝刊載った大卒内定率の記事に、目が釘付けになった読者も多いことでしょう。それは全国の大卒内定率に関する記事であり、1996年以降の調査で最低の57.6%に達したというものです。殊に中部地方(愛知・岐阜・静岡・山梨・長野・福井・石川・富山・新潟の九県)に至っては51.9%であり、来春卒業を控えた大学生の実に二人に一人しか内定を得ていないのです。
昨日、同窓生6名と久しぶりに居酒屋で飲みましたが、来春大学を卒業するT君の息子は未だ仕事が見つかっていないと言うし、今春大学を卒業したH君の娘さんの場合、結局仕事が見つからずに現在では「家事手伝い」をしているとのことです。筆者を含め、1970年代から80年代にかけて社会人になった世代の人たちにとって、当時は卒業後に一部上場企業に正社員として入社することは、格別に珍しいことでもなく当たり前のことでした。しかし、バブルが弾けた1989年以後の22年間は、不況という名の長いトンネルが続いており、前方を見ても出口の光が見えません。それどころか、2年前のリーマンショック以上の不況の波が、世界を襲うのではと予想させるような情報が、続々と筆者の手許に集まっています。たとえば、同日の東京新聞の「本音のコラム」で、中谷巌氏のFRB(米連邦準備制度理事会)が6000億ドル(約48兆6000億円)の米国債を買い取ることを決定した旨の記事が一例であり、同氏はドルの暴落を心配している様子が窺えます。尤も、実際はドルの暴落程度で済むような話ではなく、FRBがとった措置は金融ハルマゲドンを誘発し、1929年を上回る世界大恐慌が起こる確率が、非常に高まってきたというのが筆者の見方です。
ともあれ、日本の大学生が卒業を半年後に控えているというのに、未だに二人に一人しか内定が決まらないという異常な世の中、これは堤未果女史の著作を想い出さずにはいられません。それは岩波書店から出た『ルポ貧困大国アメリカ』および『ルポ貧困大国アメリカⅡ』であり、それぞれ目次を示しておきます。
『ルポ貧困大国アメリカ』
第1章 貧困が生み出す肥満国民
第2章 民営化による国内難民と自由化による経済難民
第3章 一度の病気で貧困層に転落する人々
第4章 出口をふさがれる若者たち
第5章 世界中のワーキングプアが支える「民営化された戦争」
『ルポ貧困大国アメリカⅡ』
第1章 公教育が借金地獄に変わる
第2章 崩壊する社会保障が高齢者と若者を襲う
第3章 医療改革VS.医産複合体
第4章 刑務所という名の巨大労働市場
同書はアメリカの貧困をテーマにしていますが、実は多くの点で昨今の日本にも当てはまる事が多く、殊に『ルポ貧困大国アメリカ』の第4章「出口をふさがれる若者たち」、および『ルポ貧困大国アメリカⅡ』の第1章「公教育が借金地獄に変わる」は、在学中の子供を持つ保護者の多くに読んでいただきたい章です(無論、同書に対する批判も多く、詳細はアマゾンの書評を参照)。
来年の正月あたり、仕事に追われていなければ、向こう2年間(2011~2012年)という近未来を予測した記事をアップする予定です。
【2010年11月24日付の東京新聞】
【2010年11月24日 NHK クローズアップ現代】
11月24日(水)
【総合テレビ】19:30~19:56
タイトル
「“内定がとれない” ~新・就職氷河期~」
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「57.6%」。来春卒業予定の大学生の最新の就職内定率。就職氷河期を下回る過去最低の数字となった。背景には、円高による景気低迷や国際競争力の激化で、企業が「優れた人材」だけを採る「少数・厳選採用」へとカジを切り始めていることがある。大手企業を志望する学生は就職活動に追われ、授業やゼミを欠席、採用時期と重なる留学を断念…。企業が求める「能力」を磨けないという悪循環に陥っている。内定がとれない大学生たち。なぜ決まらないのか、企業は今どんな人材を求めているのか、就職難は学生たちにどんな影響を及ぼしているのか。大学生たちが直面している厳しい実態を徹底取材。
日本社会への影響や今後どうしたらいいのか考える。
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【東洋経済HR】本当は就職氷河期ではない理由とは - 第2回
【東洋経済HR】外国人留学生の積極採用と日本人大学生への影響 - 第11回
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コメント
ゲゼル研究会の以下の記事を参照。なお、同研究会は、「非政治、非営利、非宗教の姿勢で持続可能な社会実現に寄与したいと願っています」と、冒頭に掲げている。
http://grsj.org/2010/11/post-126.html
投稿: サムライ | 2010年11月19日 (金) 午前 04時12分