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2010年11月

2010年11月20日 (土)

円高の中、翻訳者は…

2年近く続いた2件の大型プロジェクト(翻訳)が、先月ほぼ時を同じくして終了したので、今月に入る頃から久しぶりの“充電期”(毎日平均して2~3時間ていどの仕事量に減るため、自由になる時間が増えたという意味)に入っています。充電期には翻訳力を向上させるための勉強をしたり、今までに手がけていなかった金融や契約といった分野の勉強、あるいはTradosやWordfastといった、翻訳支援ツールを使いこなすための、独習あるいはセミナーへの参加の計画の他、仕事部屋には読もうと思って購入した、積ん読状態の大量の本にも目を通したいと思います。尤も、翻訳技術に関する書籍は少なく、殆どが他のジャンルの本ですが…。また、暫く会っていなかった知人・友人とも会いたいし、上京して映画・美術展などにも足を運びたいと思います。

しかし、未だ二人の学生を抱える身分としては、いつまでもノンビリと自由気ままな生活を続けているわけにはいかず、来月の12月あたりから、徐々に先月までのような仕事部屋に缶詰状態になる生活に戻さなければなりません。

ここで、リーマンショック以降の世界経済に目を転じれば、傍目には景気が上向いてきたようなニュースも時折耳にしますが、基本的には世界経済は奈落の底に向かっていることは間違いなく、いずれドルの崩壊は避けられないと筆者は睨んでいます。ドルが単なる紙切れになるのは一向に構わないのですが、問題は食糧でしょう。今夏の干ばつによる不作のため、ロシアが2010年8月15日から年末まで、他国への小麦の輸出を停止したニュースは記憶に新しいところであり、近未来に一層深刻な食糧危機が到来した場合のことを想定し、実際に食糧危機になったらどうするのか、今から対策を講じておくべきだと、筆者はことある毎に警鐘を鳴らし続けてきました。(このあたりは、機会があれば1本の記事にしたいと考えています)

よって、ここ1~2年は世界経済の不透明な状態が続くと想定して、大型プロジェクト2件を終えた筆者は、“充電期”に入った今月に入ってから少しずつトライアル(翻訳会社の翻訳試験。この試験にパスすれば仕事を獲得できる)を受けており、お陰様で大型プロジェクト1件を含め、幾つかの翻訳会社のトライアルに合格、また結果待ちの翻訳会社も数社あるものの、既に少しずつ少量の仕事が始まっています。尤も、過去10年間の体験から、プロジェクトの開始が遅れたり、突然中止になったり、契約していた翻訳会社が倒産したりといったケースがあったので、仕事が重なっても構わないというつもりで、実際に大型プロジェクトが始まるまでは、気を緩めずに他の翻訳会社やメーカーのトライアルを積極的に受け続けていきます。

このように、久しぶりにトライアルを受けて新規の仕事を獲得していく中、色々と思うところがありました。

■海外と日本の翻訳会社の違い
現在の筆者の翻訳の仕事は、95%前後が海外の翻訳会社を介したもので、必然的に翻訳料金も外貨建てであり、ドルやユーロなどで私の銀行口座に振り込まれます。しかし、このところの円高ということもあり、精力的に国内の翻訳会社との取引を復活させるようになりました。国内と海外の翻訳会社の違いは色々ですが、翻訳者の立場から見るに、海外の場合は英日翻訳が中心であるのに対して、国内の場合は意外と日英翻訳の依頼が多いという点にあるでしょう。もっとも、3年ほど前は筆者も日本国内の翻訳会社を相手に、精力的に日英翻訳の仕事をしていました。しかし、この3年間ほど浦島太郎状態だったので、今の状況はどうなっているのだろうかと、数名の翻訳者仲間に問い合わせたところ、基本的なものでは大きな変化がないことが分かって安堵しました。よって、久しぶりに日英翻訳も承っていくことにした次第です。この世界に入った翻訳者の卵さんたちも、1~2年ほどは英日翻訳だけを承り、ある程度この業界の水に慣れたら、日英翻訳に挑戦していくのも良いかもしれませんね。筆者がこの世界に足を踏み入れた2000年当時、ベテランの某翻訳者に、「サムライさん、日英翻訳に挑戦されると、飛躍的に翻訳力が伸びますよ」とアドバイスしていただいたことがあります。それが日英翻訳も承るようになったきっかけでした。

■心の通じ合う翻訳者仲間を作る
人としての誠実さを持っていること、次に翻訳観を共有する翻訳者との、ネットワークを構築することが大切だと思います。人間一人の力などはたかが知れており、その意味で心の通じ合う仲間が居ると心強いものです。本ブログの読者の中には翻訳者の方もおられると思いますが、是非、翻訳観を共有できる同業者を見つけ、情報交換をしていくことをお勧めします。

最後に、今後も翻訳に関する記事は年に1回は最低書きたいと思います。よろしくお願いいたします。

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2010年11月16日 (火)

金王朝の “深い深い謎”

一時は更新が滞っていた飯山一郎さんのホームページ、「たたかう老人! 飯山一郎の ハッタリなしの 口演会場 」、最近は精力的に更新されるようになり、一ファンとして嬉しいことこの上ありません。その飯山さんのHPで、最近特に注目すべきなのが「金王朝の “深い深い謎”」という連載記事でしょう。興味深いのは、その連載記事の冒頭に毎回必ず、横田めぐみさんと金正恩の顔写真を並べている点であり、その写真の下の解説を読むと、「目もと、鼻のつくり、小さな口…、たしかに…」とあります。これはイミフメー…ではなかった、意味深長です。
Megumi   Jonun
目もと、鼻のつくり、小さな口…、たしかに…

その飯山さん同様に北鮮の内情に詳しいのが、『月刊日本』の論説委員を務める山浦嘉久さんでしょう。その山浦さんが『月刊日本』2008年8月号に、「旧宗主国としての覚醒」という記事を書いており、その中で以下のような大変興味深い記述があります。

 金王朝が疑似天皇制国家ならば、皇統が大切になってくる。金正日の後継者は、正統権威である金正日の実子であると同時に、母からはさらに神話的・権威的血を受け継いでいる必要がある。
 北朝鮮は用意周到な国家だ。拉致の対象者も、徹底的に調査を行ってから拉致したはずである。横田めぐみさんにしても、偶発的に拉致したのではなく、目をつけ、あらゆる点で拉致対象に最適であることを確認してから拉致したはずである。
 では、なぜそんな少女を拉致する必要があったのか。当時の年齢であれば、5~6年ほど暮らせば朝鮮語、社会にも馴染む。そして丁度その頃、結婚適齢期を迎える。また、横田めぐみさんの母方は高貴な家系に属し、血筋も由緒正しいものだ。
………以下略………

『月刊日本』2008年8月号

なお、山浦さんが北鮮に関する自説を語るビデオもあり、関心のある方は見てみてください。
月刊日本 山浦嘉久氏 日朝関係を語る 1旧宗主国としての自覚

また、『金正日は日本人だった』(講談社)を著した佐藤守氏との対談もビデオに残っています。
特別講演会 金正日は日本人だった 7 山浦嘉久3 何故?何故?の発想

『金正日は日本人だった』を巡って、筆者は飯山さんの掲示板に色々と情報を書き込みました。その当時の掲示板は、ヤフーに強制的に抹殺されてしまいましたが、幸い阿修羅さんに残されていました。
『金正日は日本人だった』 - ☆ 雑談室:『時事放題』 ☆

なお、蛇足ながら知人のブログ「つむじ風」で、中丸薫が北鮮を訪問した記事があります。
北朝鮮の実態?! -中丸 薫氏の北朝鮮訪問-

その中で、船井幸雄の記事が転載されており、船井氏は「彼女(中丸薫)は正真正銘の明治天皇のお孫さんで、明治12年(1879年)8月31日にお父上の堀川辰吉郎氏は明治天皇と千種任子(ちくさことこ)さん(権掌侍)の間に生まれた人だ」と述べています。それがネットの世界では“常識”になっているようですが、全くの間違いです。その根拠は最新刊の『New Leader』11月号で、落合莞爾氏が以下のように述べているからです。

中丸薫と中矢伸一(堀川辰吉郎の生涯を描いた『大霊脈』の筆者)が口を揃えて辰吉郎の実母という千種任子(1856~1944)は、実際にも明治天皇の典侍であったから、作り話の一環と視るべきである。辰吉郎の実母は何れ堀川御所に住んでいた女性に間違いなく、岩倉具視の親族と囁かれているが、それ以上は聞こえてこない。
『New Leader』11月号 p.91

詳しくは同記事を読んでいただくとして、落合氏に関する記事「近代日本史の舞台裏」を書いた者として、落合氏の筆に間違いはないと確信しております。

最後に、飯山さん、今後もHP更新を楽しみにしています。ただ、あまりお酒を飲み過ぎず、御身大切に願います(苦笑)…。

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2010年11月14日 (日)

“超”就職氷河期

大学生や高校生の子供を持つ家庭では、昨日(2010年11月13日)の各紙朝刊載った大卒内定率の記事に、目が釘付けになった読者も多いことでしょう。それは全国の大卒内定率に関する記事であり、1996年以降の調査で最低の57.6%に達したというものです。殊に中部地方(愛知・岐阜・静岡・山梨・長野・福井・石川・富山・新潟の九県)に至っては51.9%であり、来春卒業を控えた大学生の実に二人に一人しか内定を得ていないのです。

昨日、同窓生6名と久しぶりに居酒屋で飲みましたが、来春大学を卒業するT君の息子は未だ仕事が見つかっていないと言うし、今春大学を卒業したH君の娘さんの場合、結局仕事が見つからずに現在では「家事手伝い」をしているとのことです。筆者を含め、1970年代から80年代にかけて社会人になった世代の人たちにとって、当時は卒業後に一部上場企業に正社員として入社することは、格別に珍しいことでもなく当たり前のことでした。しかし、バブルが弾けた1989年以後の22年間は、不況という名の長いトンネルが続いており、前方を見ても出口の光が見えません。それどころか、2年前のリーマンショック以上の不況の波が、世界を襲うのではと予想させるような情報が、続々と筆者の手許に集まっています。たとえば、同日の東京新聞の「本音のコラム」で、中谷巌氏のFRB(米連邦準備制度理事会)が6000億ドル(約48兆6000億円)の米国債を買い取ることを決定した旨の記事が一例であり、同氏はドルの暴落を心配している様子が窺えます。尤も、実際はドルの暴落程度で済むような話ではなく、FRBがとった措置は金融ハルマゲドンを誘発し、1929年を上回る世界大恐慌が起こる確率が、非常に高まってきたというのが筆者の見方です。
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ともあれ、日本の大学生が卒業を半年後に控えているというのに、未だに二人に一人しか内定が決まらないという異常な世の中、これは堤未果女史の著作を想い出さずにはいられません。それは岩波書店から出た『ルポ貧困大国アメリカ』および『ルポ貧困大国アメリカⅡ』であり、それぞれ目次を示しておきます。

『ルポ貧困大国アメリカ』
第1章 貧困が生み出す肥満国民
第2章 民営化による国内難民と自由化による経済難民
第3章 一度の病気で貧困層に転落する人々
第4章 出口をふさがれる若者たち
第5章 世界中のワーキングプアが支える「民営化された戦争」

『ルポ貧困大国アメリカⅡ』
第1章 公教育が借金地獄に変わる
第2章 崩壊する社会保障が高齢者と若者を襲う
第3章 医療改革VS.医産複合体
第4章 刑務所という名の巨大労働市場

同書はアメリカの貧困をテーマにしていますが、実は多くの点で昨今の日本にも当てはまる事が多く、殊に『ルポ貧困大国アメリカ』の第4章「出口をふさがれる若者たち」、および『ルポ貧困大国アメリカⅡ』の第1章「公教育が借金地獄に変わる」は、在学中の子供を持つ保護者の多くに読んでいただきたい章です(無論、同書に対する批判も多く、詳細はアマゾンの書評を参照)。

来年の正月あたり、仕事に追われていなければ、向こう2年間(2011~2012年)という近未来を予測した記事をアップする予定です。

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【2010年11月24日付の東京新聞】

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【2010年11月24日 NHK クローズアップ現代】
11月24日(水)
【総合テレビ】19:30~19:56
タイトル
「“内定がとれない” ~新・就職氷河期~」
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「57.6%」。来春卒業予定の大学生の最新の就職内定率。就職氷河期を下回る過去最低の数字となった。背景には、円高による景気低迷や国際競争力の激化で、企業が「優れた人材」だけを採る「少数・厳選採用」へとカジを切り始めていることがある。大手企業を志望する学生は就職活動に追われ、授業やゼミを欠席、採用時期と重なる留学を断念…。企業が求める「能力」を磨けないという悪循環に陥っている。内定がとれない大学生たち。なぜ決まらないのか、企業は今どんな人材を求めているのか、就職難は学生たちにどんな影響を及ぼしているのか。大学生たちが直面している厳しい実態を徹底取材。
日本社会への影響や今後どうしたらいいのか考える。
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【東洋経済HR】本当は就職氷河期ではない理由とは - 第2回

【東洋経済HR】外国人留学生の積極採用と日本人大学生への影響 - 第11回

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