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2005年10月24日 (月)

『新石油文明論』

b051024 今秋開催予定の脱藩道場総会に、『新石油文明論』(槌田敦著 農山漁村文化協会)が取り上げられることになり、参加する予定の私は早速オンライン書店に発注をかけました。そして、数日後に届いた同書を一気に読了したのですが、久々に読み応えのある本に出会ったなという幸せな気分に包まれた次第です。以下、例によって印象的に残った個所を一部列記しておきましょう。

 ところで、自然科学者や経済学者が、地球環境や社会について的確に対応できないそもそもの原因は、それらの学問の基礎となる物理学の現状にある。現在の物理学には、孤立した系または平衡状態にある系、つまり物質やエネルギーが出入りしない物質系を論ずる熱力学しか存在しない。このような孤立・平衡系の熱力学では、物質やエネルギーの出入りする生命や人間社会を含む現実の世界が理解できるわけがない。
 そこで、基本に戻って、物質やエネルギーの出入りする開放系の熱物理学を新しく構築することとした。この開放系の熱物理学なら、活動維持、いわゆる持続可能性の条件が得られる。それは、入力出力物質循環複合循環、そして遷移の5つの条件から成り立つ。
『新石油文明論』p.2

ここで述べられている「開放系の熱物理学」は、同書の白眉とも云うべき画期的な概念です。槌田氏の説く「開放系の熱物理学」については、同書にじっくりと目を通して理解するのも良いでしょうし、直ぐにも「開放系の熱物理学」について知りたいというのであれば、以下の図サイトを訪問してください。
『環境問題』を考える

ご参考までに、以下は「開放系の熱物理学」の図です。

circulation01
物質系が活動を維持するための条件

この図は、私たちにとって身近な車のエンジンや飛行機のエンジンの全行程を、今まで見慣れたピストンリングの図を使わずに、別の観点から図示したものであり、この図に「開放系の熱物理学」の基本概念が凝縮されているのです。同書ではそのあたりを以下のように述べています。

 「エントロピーは発生するばかりで、消滅することはなく、エントロピーが溜まれば活動は止まってしまうと熱物理学は教えている。しかし、活動を維持する不思議な物質系が存在する。それはエンジン(生命を含む)である。
『新石油文明論』p.89

詳しい解説は同書に譲るとして、槌田氏の説く「開放系の熱物理学」は、今まで私たちが抱いていたエントロピーの固定概念を打ち破ってくれるだけではなく、エンジンに限らず、生命、人間の諸活動、社会、さらには地球、宇宙の活動も上図に当てはまることも教えてくれるのです。そして、ここで云う“諸活動”が、本ブログでも取り上げたことのあるホロコスミックス(宇宙システムを構成する多次元構造を示すの図)に行き着いたのは、私にとって自然な成り行きでした。

ともあれ、御用学者の多いご時世で、世の中の間違った常識に囚われることなく、己れの信じるところを貫くというのは並大抵ではなく、その点からも私は槌田氏の姿勢に心を打たれのでした。その槌田氏の著した書籍ですから、私が考えていたこと一致することが多いのも決して偶然ではないのでしょう。例えば、現在は地球温暖化で騒いでいますが、私は逆に近い将来において地球は寒冷化するのではと思っていただけに、槌田氏も同意見であることを知って我が意を得たりと思ったのです。

その他、原発が無駄な代物であるという点についても槌田氏と意見の一致を見ています。槌田氏の場合、原発について以下のように厳しく糾弾しています。

 …原発の運転続行は、人類の遺伝子の破壊を進め、人類の安全を脅かす重大犯罪である。
『新石油文明論』p.27

原発について言及するにあたり、槌田氏は過去勃発した代表的な原発事故についても述べています。すなわち、・ウィンズケール原発事故、・スリーマイル原発事故、・チェルノブイリ原発事故、・美浜原発事故の四つの代表的な原発事故です。中でも、尤も深刻だったのが日本で発生した美浜原発事故だったというのですから、驚く他はありません。詳しくは同書の25ページを読んで頂くとして、美浜原発事故をはじめとする過去の原発事故が、大惨事にならずに“軽傷”で済んだのも、人類にとっては非常にラッキーだったと云えそうです。(チェルノブイリ原発事故は大変な事故だったのではないか、という声が聞こえてきそうですが、あの程度の事故で済んだのは人類にとって幸いだったとしか言いようがないと、同書を読めば理解していただけるでしょう)

それでも、同書を読み進めていくなかで、今まで常識と思っていたこと、正しいと思っていたことが間違いであったことを槌田氏に指摘され、愕然とした私でした。斯様に、“世の中の常識”を信じ込むことの怖さを思い知らされたのであり、以下はそのような下りの一例です。

 南極のオゾンホールはフロンが原因ではない。オゾンの少ない高層成層圏の大気がオゾンの多い南極の低層成層圏に流れこんだから生じたのである。温暖化論にしてもオゾンホール論にしても、本文中で述べる政治や企業の利益と結びついており、最近の自然科学者はこれらの代弁者に成り果てている。
『新石油文明論』p.1

私は半導体業界で計13年仕事をしてきた人間です。半導体の関係者ならご存じの通り、かつては半導体製造においてフロンは不可欠でした。フロンを大量に使用する半導体製造装置のセールスマンとして、私はヨーロッパ・アジア諸国を飛び回り、売り込んでいた人間だっただけに、フロンによるオゾン層破壊のニュースを耳にするたびに肩身の狭い思いをしてきたものです。それだけに、槌田氏の「南極のオゾンホールはフロンが原因ではない」という下りを読み、安堵したというよりは唖然としてしまったのでした。ここに、世の中の噂、より具体的には大手マスコミが流すニュースを鵜呑みにすることの怖さを、改めて痛切に思い知らされたのでした。

また、メールマガジン【日本脱藩のすすめ】の何処かに「21世紀の最大の課題は、環境問題である」と私は書いたことがあります。槌田氏も環境面での最大の問題点が寒冷化と砂漠化であるとズバリ指摘しているのであり、さらには砂漠化の犯人は自由貿易であると明確な論理で以て語っておられた下りも印象に残ります。

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