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2005年9月21日 (水)

TRADOS

つい最近までTRADOS(トラドスと発音する。翻訳支援ツール、すなわち一種の翻訳ソフトのこと。パソコンのOSはマイクロソフトのウィンドウズが主流であるように、翻訳業界の主流翻訳ソフトがTRADOSなのである)とは縁のなかった私ですが、それがここに来てTRADOSを導入することになりました。きっかけは、最近契約を交わした某翻訳会社のコーディネーターさんから「サムライ様はTRADOSを導入するご予定はありますか」と尋ねられたのがそもそもの始まりでした。実は、長い付き合いのある他の翻訳会社数社からも、「サムライさんがTRADOSを導入してくれれば、幾らでも仕事を出せるのですが…」と言われ続けてきました。そうした電話やメールがあるたびに、「いずれTRADOSに取り組みたいと思います…」と曖昧な回答を繰り返し続けて数年の月日が流れています。

前々からTRADOSをインストールしているのが仕事を回す条件になっている翻訳会社が多かったのですが、最近はとみにTRADOSを所有しているか否かが採用の条件となる翻訳会社が増えてきたような気がします。また、最近TRADOSを買収したSDLに知人が勤務しており、そこから色々とTRADOSに関する情報が入手できることが期待できる上、数日前に翻訳者として契約を交わした上記の某翻訳会社のコーディネーターさんからも、「(TRADOSを修得していく過程で)ご遠慮なく操作についてお尋ねください。分かる範囲でお答えします」という有り難いメールを頂戴していることもあり、これだけ恵まれた環境にあるのなら、TRADOSに挑戦しないというのは勿体ないと思った次第です。

ともあれ、TRADOSに本格的に取り組むことになりましたので、ここしばらくは「Wordfast」を習得するのは延期にしたいと思います。TRADOSに関しては、すでに大勢の翻訳者が使っていることでもあり、インターネットの世界でもTRADOSに関する情報は山のようにあることから、本ブログにおいて敢えてTRADOS云々について書くつもりはありません。ただ、私の場合TRADOS以外に色々と他の翻訳支援ツール(富士通アトラス、Transit、CT、Wordfast)を体験してきましたので、TRADOSとの比較という観点から何か面白いものが書けるのではと思いますので、一定のテーマがまとまった場合は皆さんに報告したいと思います。

早速クロネコヤマトのブックサービスを通じて『TRADOS6 Freelance』(中山洋一著 九天社)を昨日入手し、パラパラとページを捲ってみましたが、画面のイラストが多く、解説も分かりやすいという印象を持ちました。アマゾンドットコムの書評などを読んでも「かゆいところに手が届く」といった記述があるので、CT同様に今後の自分の翻訳人生の強力な武器になることを期待したいと思います。

ところで、今回契約した上記の翻訳会社は某電子メーカーの子会社です。すなわち、普通は【クライアント(メーカー)】←→【翻訳会社】←→【翻訳者】という流れなのですが、今回の場合は【クライアント(メーカー)】←→【クライアントの子会社】←→【翻訳者】という流れになります。つまり、翻訳会社の代わりにクライアントの子会社である翻訳会社が間に入る形になりますが、クライアントと翻訳者の間に翻訳会社が入るという一般的なケースと異なり、間にクライアントの子会社(翻訳会社)が入ることで、ビジネス戦術の観点から優れていると思った次第です。以下は、間に翻訳会社が入るかクライアントの子会社が入るかによるメリット・デメリットの比較表です。

翻訳会社か子会社か…
内容翻訳会社子会社
料金
×
品質
×
管理
×

最初に、一翻訳者の立場から言えば、[料金面]では【クライアント】←→【クライアントの子会社】←→【翻訳者】のケースの方が、【クライアント】←→【翻訳会社】←→【翻訳者】のケースよりも、高い翻訳料金なので有り難く思うのが普通でしょう。一般に、翻訳会社は営業担当者を置いて翻訳の仕事を獲得したり、広告宣伝費等が必要ですが、クライアントの子会社の場合は一切必要ありません。何故なら、翻訳の仕事は常に親会社から回ってくるのですから営業活動は必要ないのです。したがって、それだけ余分に翻訳者に翻訳料金を支払うことが可能になるのです。また、品質面でも、一般に翻訳者がクライアントに直接翻訳上の問い合わせをすることは原則としてタブーとなっており、翻訳会社を介して問い合わせするのが普通です。【クライアント】←→【クライアントの子会社】←→【翻訳者】のケースであれば、親会社と子会社というツーカーの間柄ですので、かなりのレベルの質問にも答えてもらえるというわけであり、必然的にそれが翻訳品質に反映されることは言うまでもありません。無論、良いことずくめではなく、本来は翻訳会社に丸投げしておけば、翻訳料金・翻訳品質を問わなければ、後は黙っても期限内に訳文が仕上がってくるので楽なのですが、自社あるいは子会社を使って翻訳業務をやらせるとなると、翻訳関連の業務以外にも人材雇用の面・管理費・その他をこなさなければならないという煩わしさが生じてきます。

ここまで書けば推測できるかと思いますが、クライアントが一部上場といったある程度の規模の会社でないと、子会社に翻訳業務をやらせるのには無理があり、中小企業であれば懇意の翻訳会社に翻訳の依頼を丸投げにした方が、遙かに能率的ということは言うまでもありません。翻訳料金だけを考えれば、定年を迎えて子どもたちも巣立ち、後は小遣いぎ程度の翻訳料金をもらえれば良いということで、タダ同然の翻訳料で仕事を引き受ける一部の日本人の翻訳者、あるいは中国人やインド人の翻訳者に依頼すれば翻訳料金が遙かに安くて済みますが、品質について問題になることが多くなるはずであり、料金の安さに惹かれて海外の翻訳会社に翻訳を依頼した体験のある企業であれば、翻訳品質に問題があることについては身に染みて分かっているはずです。かといって従来通り日本の翻訳会社に依頼すれば、高い翻訳料金を請求されるというジレンマに日本の企業は立たされているのです。それならいっそのこと、自社製品に対して技術的な背景知識のある、優れた翻訳者だけを自社にプールしておけば、翻訳品質の面で全く問題が無い上、翻訳者にも十分に満足してもらえる翻訳料金を支払えるというわけであり、双方万々歳ということになるのです。

それでも、上次元から眺めれば、将来的に見た翻訳の仕事は、確かな翻訳力を持つ一部の日本人の翻訳者→翻訳技術が向上した外国人の翻訳者→翻訳精度が向上した機械へとシフトしていくであろうし、それにつれて段々と翻訳料金も下がっていくのは避けられない状勢でしょう。そうした風潮の中、翻訳者として今後も生き延びていくには、外国の翻訳者や機械にはできないレベルの翻訳の「質」で勝負することだと私は思います。と同時に、それだけでは生活していくには苦しい場合は、妥協案としてTRADOSなどの翻訳支援ツールを使った翻訳の「量」の仕事も並行して手をつける必要があります。ともあれ、どの仕事もそうでしょうが、のほほんとしていては遠からず翻訳業界から“弾き出される”ことは目に見えています。

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