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2005年9月15日 (木)

経済学のすすめ

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2年ほど前に、IBDの機関誌『世界の海援隊』に「経済学のすすめ」と題する拙文を投稿したことがあります。経済に関心のある人たちに以下を一読してもらえれば嬉しく思います。

経済学のすすめ

 メタサイエンスという21世紀科学の潮流について世界で初めて本(『宇宙巡礼』 東明社刊)の形にして世界に発表したのは、本シリーズでもたびたび登場する在米の藤原肇博士であった。筆者はその藤原博士の著作を通じて、あるいは博士から直にメタサイエンスについて教えを受けた一人であり、本シリーズでも第二回「メタサイエンスのすすめ」の他、ほぼ毎回のようにメタサイエンスについて様々な角度から取り上げてきたので、読者の頭の片隅にメタサイエンスという言葉がインプットされたのではと思う。ともあれ、今回は経済が主テーマであることから、経済をメタサイエンスの観点から捉えるために重要となるツールの一部を以下に列記しておきたい。

  ■MTKダイアグラム
 MTKダイアグラムというのはエネルギー史観に基づく経済理論を表したもので、今からちょうど30年前の1974年、カナダの国際会議の講演において藤原肇博士が英文の論文で発表した“ORGANIZATIONAL STRUCTURE OF THE OIL INDUSTRY”であり、MTKに関する様々な図表を挿入してあるので一度目を通していただければと思う。

  MTKダイアグラムについての解説は“ORGANIZATIONAL STRUCTURE OF THE OIL INDUSTRY”に譲るが、いずれにせよ経済という人間の営みを真に理解するためには、今までの経済学の知識を一端捨て、改めて文明次元の視座から社会の変遷を眺めつつ、エネルギーがどのような現れ方をしているのかを観察することにより、ダイナミックな相の変化を捉えていくことが必要なのである。

  ■太陽黒点に基づく景気の循環理論
 上記の“ORGANIZATIONAL STRUCTURE OF THE OIL INDUSTRY”に目を通した読者は、MTKダイアグラム以外に太陽黒点とゴンドラチェフの波についても言及しているのに気づかれたと思う。筆者がゴンドラチェフ波動理論の存在を知ったのは、今から20年前の1984年に目にした『無謀な挑戦』(藤原肇著 サイマル出版会)が最初であった。

  太陽黒点とゴンドラチェフの波からお分かりのように、ゴンドラチェフの波は景気の変動に及ぼす太陽黒点と密接に関係した波であり、人為的な操作でどうなるものでもないことが一目瞭然である。黒点の経年変化と景気変動との関係が明らかにされた経緯について、藤原博士が以下のように述べているので一読されたい。

 つまり、太陽の黒点の変化が気候に影響を与えて、農産物の価格に周期性を発生させるせいで、それが食糧や商品の卸売り物価指数に現れます。そして、不況が襲来して規模が大きければ、大不況から恐慌現象を招いてしまう。
 具体的な相関関係がどんな形で現れるかというと、黒点の多い年は暖かい気候が支配し、小麦など穀物が豊作になって値段が下がり、経済環境が不況の色を濃くするわけです。
 これを言い出したのは天文学者のハーシェルだが、このアイディアを経済問題と結びつけて、太陽黒点と景気循環を正面から論じたのは、エコノミストとしては英国のジェボンズでした。
 彼が大学生だった時に休学してオーストラリアに渡り、学資稼ぎのために造幣局の役人になったが、シドニーに着くまでの船旅を気象観測で過ごし、雲の形の研究や天文観測を楽しんだそうです。
 それがハーシェルと親しくつき合った背景になり、太陽黒点の周期性と農作物の収穫の関係を通じて、景気の循環理論の体系化になっていくのです。
『超経済学 波動理論で新世紀の扉を開く』p.173~174

 ジェボンズの景気循環論を高く評価したのはシュンペーターであった。日本では景気循環説が経済学者やエコノミストの間で引用されていることが多いものの、藤原肇博士をはじめとするごく僅かな人間しか景気の循環理論の有効性に気づいていないのは残念である。

■ガウス座標
 最近の日本は国民同士がバラバラであり、政界・財界・官界の腐敗ぶりには凄まじいものがあるが、これも社会全体にわたって信用が損なわれているためである。それほど重要な信用であるが、目に見えないインタンジブルなものであるためか、今までに日本の経済学者やエコノミストの間で信用を取り上げた者はほとんどいなかったように思う。そのインタンジブルな信用を複素数として、ガウス平面に表示する構想を打ち出したのが藤原博士である。

 ガウスの予備段階としてφ座標を藤原博士は用意されている。このφはフィボナッチ数列のことであり、自然の摂理を探求するにあたって物凄い威力を発揮する数列だが、第二回「メタサイエンスのすすめ」で既にそのあたりを述べているのでここでは繰り返さないこととする。それはさておき、次のガウス座標について藤原博士は以下のように述べている。

ガウス平面(複素数平面)のX軸(横軸)に実物経済の指標をプロットすると共に、Y軸(縦軸)に「信用度」を複素数で表示するものです。
X軸方向の長さは実数でY軸方向の長さは虚数i(√-1)という単位で計れば、どんな複素数z=a+biもガウス平面上の一点P(a、b)で表せるし、f(z)=0というすべての多項式は、少なくとも実数か虚数の解を持ちます。
もっとも、この複素数面で表したガウス座標の実用化は、21世紀の半ばにならないと無理であり、現在のサイエンスはまだその段階に達していません。
『超経済学 波動理論で新世紀の扉を開く』p.182

 ガウス座標は現在のサイエンスのレベルでは普及にほど遠く、実用化は50年先になるということもあり本稿ではガウス座標の説明は省略するが、それでも関心のある読者は『超経済学 波動理論で新世紀の扉を開く』のp.215から読み進めるとよい。尤も、残念ながら本書は絶版であって入手不可能であるが、神田の古本屋街を精力的に回れば運良く入手できるかもしれない。あるいは地元の図書館で借りるのも一手であろう。

写真提供:むうじん館 http://www.fsinet.or.jp/~munesan/
巾着田のヒガンバナ。

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