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2005年9月14日 (水)

『曼陀羅の人』

b050914 数日前、松岡正鋼の著した『空海の夢』をアップしましたが、藤原肇氏(地質学者・元オイル・ジオロジスト)が空海関連の書籍について比較していたのを覚えているでしょうか。

「空海の間脳幻想について」今年は空海が渡唐して1200年目だということもあり、空海について池口和尚との三回にわたる対談をまとめ終えた段階で、「性霊集」を読み直したいという気持ちになった。私は似たテーマの本を数冊ほど同時に読むという癖があり、今回は久しぶりにA「空海の夢」,B「空海の風景」,C「曼荼羅の人」を並列方式で読み、いわゆる直列方式から離れて読書を試みた。結論だけ書くとこれまでの評価はABCの順だったが、今回の並列方式の読書の結果はCABになったのであり、十数年前は「空海の夢」に強い印象を受けたので、「アメリカから日本の本を読む」にも書評したのだった。今回の再読を通じてCにはインテリジェンスの面白さを感じ、Bはあくまでもインフォメーションの本だと思い、Aはその中間だという印象を強くしたことが興味深かった。(このヒントを叩き台に議論が賑わって欲しい)

残念ながら、私は司馬遼太郎の『空海の風景』を読んだことはありませんが、陳舜臣の『曼陀羅の人』であれば10年ほど前に目を通しており、当時はワクワクしながら一気に読了したのを覚えています。その『曼陀羅の人』を最近再読した藤原氏は高く評価していますが、その理由として『曼陀羅の人』にはインテリジェンスの面白さがあり、『空海の風景』はインフォメーションだけの本である、と藤原氏は述べています。

私の場合、十代の頃から日本を飛び出し、今日に至るまで修業を積み重ねてきましたが、それは偏に「己れのインテリジェンスを高める」ための修業であったと云っても過言ではありません。このインテリジェンスは、言葉としては日本語の書籍などにも良く見受けられますが、インテリジェンスという概念を正しく伝えている書籍は皆無に近いのが実状です。そこで、5年ほど前のメールマガジン【日本脱藩のすすめ】で、インフォメーションとインテリジェンスの違いについて書かれた個所を、『インテリジェンス戦争の時代』から引用しているのを思い出したので参考までに以下に再掲しておきましょう。

 最初に知能。知能とは、寄せ集められ整理された情報、すなわちインフォメーションをそれぞれ関連づけながら、グループ化する能力を指します。言わば、インフォメーションの分析と統合です。これによって一次情報というインフォメーションの段階では隠れて見えなかったものが見えてくるようになり、全く新しい価値体系を得ることになるのです。この情報力を身につけるのが最初の目標です。
 次に知慧。これは、高度な専門的訓練を通して、初めて身につく情報力です。つまり、知慧とは、全体と部分の関係で分析と統合化を行なうと同時に評価を下すことによってプライオリティを決める能力、すなわち、総合したものを判断して評価出来る能力を指します。このレベルに達すると、実務経験を通して身につけた高度な判断力を駆使して、未知の要因を予測する推察力ないしは想像力が生まれてきます。
 最後に智慧。インテリジェンスの最高のレベルに相当するものです。このレベルに達している日本人はほとんどいないようです。それほど困難な智慧というレベルに達している日本人の一人である藤原さんの言葉を借り、智慧とはどのようなレベルなのか覗いてみましょう。
 「インテリジェンスの最上位において問われるのは、決断と指令における卓越した能力と、それを複雑な状況の中で使いこなす才能であり、豊かな経験と鋭い直観力に恵まれた人材が、天の時と地の利という状況を正しく判断して、決定を勇敢に実践することである。この段階ではわずか数人のトップの人材が、孤独の中で決断に関与することになるし、最終的な連帯責任を取ることになる。また、組織は常に階層構造で成り立っており、企業や政治機構の最高責任は一人のトップに集中し、その人間の人格の高潔さと品位が、インテリジェンスの真の価値を決定付ける。なぜならば、組織を統括する最高責任者の人間的な信用は、その人の理想や人生哲学の質に関わっており、その品格が説得力として機能するお蔭で、組織体の自己安定に貢献することになるし、仮に相対的に優位に立とうとする動機があっても、卑劣な取引や背信行為を相手に感じさせないのである。」(『インテリジェンス戦争の時代』p.9)

インテリジェンスを正しく理解するには、藤原肇氏の『インテリジェンス戦争の時代』の一読を皆さんにお勧めしたいのですが、残念ながら絶版ですので古本屋で探してもらうより他はありません。幸い、毎年春と秋に脱藩道場総会を都内で開催しており、藤原肇氏も参加者の一人として顔を出していますので、インテリジェンスとは何かと知るためにも実際に参加してみて、藤原肇氏からインテリジェンスについて直に吸収すると良いかもしれません。今秋は11月前後に開催を予定しており、掲示板【藤原肇の宇宙巡礼】で案内を出しますので、参加希望者は案内を見落とさないようにしてください。大勢の皆様の参加を期待しています。

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