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2005年9月25日 (日)

『ミトコンドリア・ミステリー』

b050925 2年ほど前に、アマゾン・ドットコムに『ミトコンドリア・ミステリー』(林純一著 講談社)についての書評を載せたことがあり、過日紹介した『究極の免疫力』と併せて読むと面白いだろうと考え、以下に当時の書評を再掲します。

ミトコンドリアについての一般知識を身につけたいというの入門者に対しては、『ミトコンドリアと生きる』(瀬名秀明・太田成男共著 角川書店)、あるいは『ミトコンドリアはどこからきたか 生命40億年を遡る』(黒岩常祥著 NHKブックス)などを紹介した方が本当は親切なのかもしれない。それでも敢えて本書をミトコンドリアに関心のある読者に推薦するのは、『ミトコンドリア・ミステリー』を通じて、筆者である林純一氏の研究者としての姿勢に、野武士的なものを読者に嗅ぎ取って欲しかったからである。ちなみに、筆者は『内臓が生みだす心』を著した西原克成博士のように、我が道を行く野武士的な生き方を貫く科学者に共感を覚える人間であることを告白しておく。

無論、『ミトコンドリア・ミステリー』から伝わってくるのは、林氏という一研究者の持つ清々しい生き様だけではない。林氏の研究が今後のミトコンドリアの研究に大きな影響を及ぼすことが予想されることから、そうした林氏の研究内容を知るだけでも一読の価値はあると思うのである。すなわち、ミトコンドリアDNAの突然変異のために癌になるというのが、従来のミトコンドリア研究者の説の主流を成していた。そうした従来説を林氏が完膚なまでに打ち砕き、ミトコンドリアDNAが癌の原因ではないことを実証してみせたのである。また、老化が起こるのはミトコンドリアのためと専ら信じられているが、この老化説も林氏は実験によって完全に否定しただけでなく、同時に「ミトコン ドリア連携説」という独特の林説を提唱されたのである。

ともあれ、科学の分野に限らず、日本という環境下では主流となっている説に異論を持ち出すのは非常に勇気の要ることであり、そのために干されることも少なくない。それでも敢えて自説を曲げず、従来の主流であった説を覆した林氏に心からの拍手を送りたい。

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