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2005年9月13日 (火)

『暗黒日記』

b050913 先日、本ブログで紹介した『志に生きる!』で、『暗黒日記』を著した清沢洌を取り上げています。その中で最も印象に残ったのは以下のくだりでした。

清沢洌 戦争への道に反対し続けた外交評論家

『暗黒日記』は国家最優先の統制主義、官僚主義に対する批判など、当時の日本社会の病理現象を見事に衝いているが、清沢が最も力説したかったことは教育問題だった。昭和20年2月16日の日記で清沢は、「教育の失敗だ。理想と教養がなく、ただ「技術」だけを取得した結果だ」と記し、日本が破局を迎えようとしている原因を教育に求めている。

『志に生きる!』p.115

今回紹介した岩波書店の『暗黒日記』は、本来の『暗黒日記』の全分量の三分の一のみを収録したものなので、残念ながら昭和20年2月16日付けの日記は割愛されています。それでも、“清沢思想”のエキスは満遍なく岩波書店の『暗黒日記』にも行き渡っていると思います。以下は例によって私が同書に赤線や青線を引いた個所の一部です。(『暗黒日記』の表紙の写真をクリックしてみてください。表紙に書かれた文章を読むことが出来ます)

この戦争において現れた最も大きな事実は、日本の教育の欠陥だ。信じ得ざるまでの観念主義、形式主義そのものである。
『暗黒日記』p.155

私のコメント:本ブログを開設した際、本ブログの方向付けとして「広い意味での教育」について取り上げる旨、6月12日の本ブログに述べました。そして、『暗黒日記』の中で清沢が繰り返して述べるところの「教育」こそが、本ブログで伝えたかった「広い意味での教育」なのです。しかし、清沢が指摘する「日本の教育の欠陥」が、戦後において改善されたわけではなかったということは、9・11選挙の結果を見れば明らかです。清沢が『暗黒日記』の中で繰りかえして述べている、「どうしようもない(日本の)国民」は、今日に至っても全く変わるところがなかったのです。

日本の指導者は「学問」などというものの価値を全く解しない。無学の指導者と、局部しか見えない官僚とのコンビから何が生まれる!
『暗黒日記』p.183

私のコメント:まさしく、今の日本です。

国際関係は最も広汎なる総合的知識を必要とする。宗教と、思想と、政治と、経済とは素より状勢判断に必須のものだ。この判断は国内において最も無知なる軍人がやるのだから駄目なはずだ。
『暗黒日記』p.186

私のコメント:清沢の謂う「国際関係は最も広汎なる総合的知識」を身につけさせる…、それこそ今の子どもたちに必要な教育なのですが、今の日本の教育では望むべくもありません。

それにしても、この言論圧迫時代を、弧城を守り通して来たのは石橋湛山氏の『東洋経済』だけである。
『暗黒日記』p.215

私のコメント:『暗黒日記』を通じて伝わってくるのは、当時は如何に言論の自由が圧迫されていたかという事実です。そして、今日の日本も、真綿で首を絞めるように徐々に言論の自由が失われつつあります。 鹿砦社社長・松岡利康氏の逮捕が、日本で失われつつある言論の自由を物語っています。

頭山満が死んだそうだ。愛国心の名の下に、最も多く罪悪行なった男だ。同時にまた最もよく日本人の弱点を代表している男でもあった。
『暗黒日記』p.234

この世界から戦争をなくすために、僕の一生が捧げられなくてはならぬ。
『暗黒日記』p.245

僕は淋しくなった。小泉(信三)の如くは最も強靱なるリベラリストだと思った。しかるに今、それがまったく反対であることを発見した。
『暗黒日記』p.251

日本で最大の不自由は、国際問題において、対手の立場を説明することができない一事だ。日本には自分の立場しかない。この心的態度をかえる教育をしなければ、日本は断じて世界一等国になることはできぬ。すべての問題はここから出発しなけくてはならぬ。
『暗黒日記』p.262

私のコメント:ここでも再び「教育」が顔を覗かせています。清沢洌の謂う「教育」は、本ブログの「教育」と基底で相通じるものがあるのであり、『暗黒日記』は単に戦中という昔のことを書いた日記というだけではなく、日本の近未来も描いているのではと錯覚しそうです。“今”の日本を理解する意味で、『暗黒日記』は貴重な本であると謂えるのではないでしょうか。

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