フルベッキ写真(7)

最初に、西郷隆盛の写真をクリックしていただきたい。最初に目に飛び込んでくるのが、東京の上野公園にある西郷隆盛の銅像(1)、イタリア人の画家キヨソネが描いたという西郷隆盛の肖像画(2)、フルベッキ写真から切り取った西郷隆盛(とされる)写真(3)である。
実は、今回改めて三葉の写真を並べてみてピンときたことがある。それは、三葉の写真に共通して見出せる太い眉毛と大きな目、ずんぐりとした体躯といった、南九州から沖縄にかけての南方系の日本人たちに多く見られる身体的特徴である。筆者の兄弟は沖縄の女性と結婚したが、彼女の兄弟を見ても明らかに顔立ちが本土の人間と異なることが分かるのである。フルベッキ写真の西郷隆盛(とされる)写真(3)にしても、太い眉毛や目許などの特徴が西郷隆盛(1)と(2)と共通しているので、もしかしたら本物かと一瞬思ったほどであるが、下唇と顎の間に大きな瘤のようなものがある他、顔の輪郭などから見ても明らかに西郷隆盛(1)と(2)とは“別人”であることが分かる。しかし、そもそも我々が“本物の西郷隆盛”と思っている銅像(1)と肖像画(2)にしても、本当に西郷隆盛にそっくりなのかどうかについて確かなことは言えないのである。何故なら、西郷隆盛の写真は、少なくとも現時点において、一枚も“発見”されていないからだ。 1899年、上野公園の銅像除幕式に列席した西郷隆盛の未亡人イトが亡夫の銅像を見た瞬間、「宿んしは、こげなお人じゃなかったこて」(うちの人は、このような人ではなかったのに」)と思わず声を出すと、隣席に腰かけていた西郷縦道がイトの足を踏んでたしなめたというエピソードが噂となって全国に広まり、それが元になって銅像の西郷隆盛の顔は本物と似ていないと信じる人が増えたということを物の本で読んだことあるが、このイト未亡人の言葉は「銅像の顔が記憶に残る亡夫の顔と似ていない」ことを意味するのではなく、「銅像のように、西郷が着物姿で人前に現れるはずがない」という意味であったと、新人物往来社編集の『西郷隆盛 七つの謎』に書いてあった。参考までに、『西郷隆盛 七つの謎』でも紹介されている財団法人西郷南洲顕彰会の『敬天愛人』誌第二号に載った、河野辰三の「南洲翁と博文約礼」と題する論文の一部を以下に引用しておこう。
しかし、上野公園の銅像こそが本物の西郷隆盛だと主張する『敬天愛人』は、西郷隆盛を敬う組織が発行する雑誌なので多少は割り引いて読む必要があるだろう。事実としては西郷隆盛の写真が未だに発見されていないことから、上野公園の銅像こそが本物の西郷隆盛だと言われても俄には同意できないというのが正直なところだ。ちなみに、肖像画はキヨソネが西郷の弟の従道などをモデルに描いたもので、その肖像画をモデルにして西郷隆盛の銅像を高村光雲が制作している。 最後に、昨夏(2003年8月)新聞等で「西郷隆盛の肖像画発見」というニュースが一斉に報道された件に関連して一言述べておきたい。最初に、以下に新聞記事を引用する。
実は、上記の肖像画と同一人物と思われる若いころの“西郷隆盛”の写真を発見した人がいる。ホームページ【カシオペア紀行】のオーナーである。以下が問題の写真であり、同写真と情報を快く提供してくれたホームページ【カシオペア紀行】のオーナーに、この場を借りて篤く御礼を申し上げる次第である。 ホームページ【カシオペア紀行】のオーナーによれば、真ん中の立っている人物の目許が朝日新聞などに報道された西郷隆盛の肖像画と似ていると言う。なるほど、確かに目許が似ているかもしれない。しかし、キヨソネが描いたという肖像画とあまりにもかけ離れ過ぎており、どちらが本物の西郷隆盛なのだろうかと戸惑う読者も少なくないのではなかろうか。ちなみに、右側に腰を掛けている人物は、西郷隆盛の“影武者”と言われた永山弥一郎だが、一時は西郷隆盛本人と間違われていた人物であった。問題の掛け軸、上記の写真に写る“西郷隆盛”、永山弥一郎等についてさらに詳細を知りたいという読者は、ホームページ【【カシオペア紀行】】を訪問されたい。 ・フルベッキ写真(8)に続く |
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コメント
ブログ【写真が紐解く幕末・明治】に「西郷隆盛の写真について」と題した記事が掲載されました。古写真に詳しい森重和雄氏の記事だけに、重みがあります。特に、「唯一可能性のある写真があります。それは明治五年に横浜の岩倉使節団をお見送りする留守政府の 首脳たちを撮影した写真」というあたりの発言に注目。http://morishige.omlog.net/archives/1068
投稿: サムライ | 2011年2月 6日 (日) 午後 04時09分
朝日だったか読売新聞で8年ほど前官軍の格好をした西郷隆盛が写真で公になっていますがこれはみとめられていないのでしょうか。
投稿: pianopianotrio | 2010年11月 2日 (火) 午後 11時03分
このブログで紹介いただいた「カシオペア紀行」はURLが変わっています。多くの方から指摘をいただきました。
http://www.geocities.jp/michinokumeet/kikou/kikou.html
上記URLです。
投稿: 愛輪塾@管理人 | 2007年4月21日 (土) 午後 07時46分