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2005年8月17日 (水)

『日本人が知らない「二つのアメリカ」の世界戦略』

b050817 『日本人が知らない「二つのアメリカ」の世界戦略』(深田匠著 高木書房)は、読み応えのある本であると思います。たとえば、同書の国連に関する記述について私は賛成であり、本ブログにもその旨書きました。
http://pro.cocolog-tcom.com/edu/2005/07/post_1464.html

ただ、国際政治に関するユニークな視点を提供してくれる意味で同書は読む価値があると思いますが、何分にも著者の深田氏が極端な保守主義の思想の持ち主なので、それを念頭に読み進めていかないとミイラ取りがミイラになりかねませんので注意が必要です。例えば、深田氏の保守思想が良く表れているのは以下の記述でしょう。

 私は「大東亜戦争こそが、人類に対する日本の最大の使命の入口の扉であった」と先述した。「一つの世界」が成立するためには人類平等が前提になる。その人類平等の世界を到来せしめたのは大東亜戦争だ。日本は人類の進化を司る何らかの「法則」によって選ばれ導かれ、自らの手で「最後のユートピア」へと連なる入口の扉を開けた。私は日本が神国であり大東亜戦争が聖戦だというのは観念論ではない。事実その通り、日本は人類の進化のために選ばれた国なのだ。日本がキリスト教暦紀元前の時代から実に二千六百数十年間、この万世一系の天皇を護持し続け、さらに天皇が神道文明の伝統を護り続けてこられたその目的、その意義、その使命の全ては、この「人類最後のユートピア」を築くために他ならない。そしてそれはパール判事が夢に見た「世界連邦」の始まる瞬間でもある。 
『日本人が知らない「二つのアメリカ」の世界戦略』p.574

大東亜戦争を“聖戦”と断言し、天皇家が“万世一系”であると固く信じ、日本こそ人類平等の世界を到来せしめる“神国”であるとする深田氏の思想は、何かユダヤ教の選民思想を彷彿させるものがあり、到底受け容れることはできないものの、そうした思想的立場の違いを抜きにしても、同書を読むことによって“二つのアメリカ”といったユニークな視点が得られる他、国際政治に纏わる情報入手の観点から、落穂拾い的な本としての利用価値がある本であると思います。 ここで、深田氏の主張する“二つのアメリカ”については、同書の第四章「米国の世界戦略」に詳しいので目を通してください。ただ、深田氏は「量子理論や宇宙物理学・幾何学などをベースにして構築を試みてきた神哲学体系は、その到達した結果として神道に回帰した」(『日本人が知らない「二つのアメリカ」の世界戦略』p.565)と述べていますが、例えば宇宙物理学について言えば、深田氏はビッグバンやブラックホールの存在を信じているようであり、将来においてビッグバン説が否定されたとしたら深田氏が構築を試みてきたという神哲学体系はガラガラと音を立てて崩れ落ちるのは必定で、そうなったら深田氏はどう対処するのだろうかと、人ごとながらも心配になります。なお、私はビッグバンやブラックホールの存在を信じていません。そのあたりについては、本ブログの間違いだらけ宇宙論で既に述べました。 ところで、以下は例によって私が同書に引いた多くの赤線や青線の一部です。

 「土井たか子が実は帰化した在日北朝鮮人で、土井の実姉は朝鮮労働党幹部と結婚して平壌に住んでいる」という説が巷で飛び交っているが、この件についての真偽はまだ不明である。
『日本人が知らない「二つのアメリカ」の世界戦略』p.35

 「日本はアメリカの属国だ」と主張する方々に改めて申し上げたいのだが、それは十数年前までの古い感覚であり、ジワジワと中共の日本内部侵食か続いた結果、今や日本はアメリカではなく中共の属国になりつつあるのだ。
『日本人が知らない「二つのアメリカ」の世界戦略』p.125

 性犯罪者や快楽殺人者のDNAが家系に同じ傾向の者を多く誕生させることは優生学でも証明されており、昔から言うように「血は濃い」のである。
『日本人が知らない「二つのアメリカ」の世界戦略』p.207

私のコメント:優生学を説く深田氏の思想は、どこか渡辺昇一氏の思想を思わせるところがあります。

 公明党は、1999年4月に韓国政府がそれまで認めなかった創価学会の韓国法人「韓国仏教会」の認可と交換条件に、在日韓国人への参政権付与を密約している。これは学会の利益のために国家の未来を売り渡したということだ。
『日本人が知らない「二つのアメリカ」の世界戦略』p.220

 現在使用しているアメリカの中学・高校用の教科書には、(日本の敗戦および中国内戦における国民党軍の敗退によって)「全世界人口の四分の一近くの人類が共産主義陣営に組み込まれることになってしまった。中国を失った責任者を追求する共和党は、トルーマン大統領とアチソン国務長官を激しく攻撃した。共和党はさらに、共産主義者が侵食している民主党の諸機関が蒋介石に対する援助を意図的に抑えたために国民党軍は崩壊してしまった、と批判した」という記述がある。つまり民主党の容共主義とそれを批判する共和党といった図式は、アメリカでは教科書にも載る公知の事実なのだ。
『日本人が知らない「二つのアメリカ」の世界戦略』p.309

私のコメント:「二つのアメリカ」を説く深田氏だけに、なかなかの説得力があります。

 保守派知識人の中でも日本の核武装に反対する人物が多く存在しているが、この核保有の是非をめぐる見解こそが、自立思考の真の保守主義者なのか、いわゆる「戦後民主主義」の中で職業的に保守を標榜しているだけなのか、それをあぶり出す「踏み絵」ではないだろうか。親米だのといった白黒二元論の幼稚な色分けではなく、日本の核武装を認めるか否かこそ、真の保守とエセ保守(営業保守)を区別するバロメーターとなることを私は指摘しておきたい。
『日本人が知らない「二つのアメリカ」の世界戦略』p.424

 中共と北朝鮮という2ヶ国が日本を仮想敵国として核ミサイルの照準を向けている以上、日本は緊急迅速に核武装を行い、また中朝と戦争になっても引けを取らないだけの人員・平気・装備の大々的拡張を行って、中共との軍事力の均衡を図ることが必要となる。それが日本を他国の核攻撃から守る唯一確実な方法であり、妄想的な観念平和主義ではなく現実的な平和維持戦略ということなのである。非核政権を含め日本が自らの軍事力を抑えることは、何の平和維持にもつながらないばかりか、敵対国の攻撃を誘発する要因でしかない。
『日本人が知らない「二つのアメリカ」の世界戦略』p.426

私のコメント:深田氏は核をはじめとするハードだけが平和を維持すると主張していますが、そんなことはありません。ハード以上に大切なのがインテリジェンスであり、頭脳を用いたソフトな戦略を展開することを考えるべきなのです。よって、私は『タレイラン評伝』(ダフ・クーパー著 中公文庫)あるいは『インテリジェンス戦争の時代』(藤原肇著 山手書房新社)を深田氏に推薦したいと思います。

 現在の日本には、政治に関心のないノンポリシーの層を除けば保守主義とマルクス主義の二つの層しか存在しておらず、欧米でいうところのリベラル層(中道及び中道左派)は存在していない。16世紀イギリスから発祥した「人間は自由かつ機会平等」という本来の意味でのリベラル(自由主義)とは、現代の日本に置き換えるとコンサーバティブ(保守主義)の思想と同一のものとなる。一方、共産党の一党独裁支配により自由を弾圧し、強烈な不平等階層社会(例えば北朝鮮は「3階層・51分類」)を構成するマルクス主義とは、完全に反リベラルの思想である。しかし何故か日本ではマルクス主義を信奉する左派の政治家(無自覚マルキストを含む)がリベラルを自称するという不可解な現状にあるのだ。
『日本人が知らない「二つのアメリカ」の世界戦略』p.471

 実現の可否は別にして私が理想と考える仮想政権は、日本再生のグランドデザインを持つ石原慎太郎首相、平沼赳夫副首相兼官房長官、阿倍晋三外相、西村真悟国防相、高市早苗文部相、伊吹文明経済再生・金融相、平沢勝栄情報相、米田建三国家戦略担当特命相、また民間からであれば加瀬英明氏・中村粲氏・小室直樹氏・中西輝政氏らの閣僚登用が最適であり、税制改革特命相を任命するなら渡部昇一氏おいて他にない。さらにそれに加えて、日本国籍を持つフジモリ元大統領に日本政府顧問に就任して頂ければ、対テロ対策や危険管理の有力なアドバイザーになるのではないだろうか。
『日本人が知らない「二つのアメリカ」の世界戦略』p.528

私のコメント:ブラックユーモアもいいところであり、果たして深田氏は正気なのだろうか…。尤も、深田氏の思想的背景を考えれば、深田氏の考えそうな仮想閣僚ではあると思います。

 地政学上においては日本人が決して忘れてはならない二つの方向が存在している。一つはランドパワーとシーパワーは必ず衝突し対決する運命にあるということ。そしてもう一つは、もし対決をどちらかが避けた場合は、避けた側が相手側の属国となるしかし国家として生き残る道がなくなるといとう方向である。日清戦争も日露戦争も、シーパワーとランドパワーの対決であった。米ソ冷戦もそうだ。今回のイラク戦争も、米国のシーパワーとイラクのランドパワーとの対決である。そしてこのイラク戦争において米国のイラク攻撃を支持した主要国は、日本、英国、イタリア、オーストラリアなど全てシーパワーたる海洋国家(および中間国家)であり、反対したロシア、中共、仏、独は全てランドパワーたる大陸国家である。賢明なる読者諸氏はもうお分かり頂けたであろう。世界は全て地政学で動いているのだ。私が本書で述べてきた全ての国際情勢は、地政学に基づいての二つのパワーの衝突なのである。
『日本人が知らない「二つのアメリカ」の世界戦略』p.550

私のコメント:異見はあるかもしれませんが、「二つのアメリカ」と共に、地政学に関する深田氏のユニークな考察は、『日本人が知らない「二つのアメリカ」の世界戦略』のもう一つの優れたものであると思います。

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コメント

こんにちは
実は、貴殿の書評を読んで、この書物を読みました。
良い本をご紹介頂きありがとうございました。

一点、気になる点がございましたので、コメントを
させて頂きます。

>深田氏は核をはじめとするハードだけが平和を維持
>すると主張していますが、そんなことはありません。
>ハード以上に大切なのがインテリジェンスであり、頭
>脳を用いたソフトな戦略を展開することを考えるべき
>なのです。

 深田氏は、この書物の中で「インテリジェンス」の言
葉は用いていませんが、この本を読みながら、又、読み
終えて思った事は、インテリジェンスの大切さです。
 具体的なインテリジェンスの取組については触れてお
りませんが、この本は、インテリジェンスの大切さを自
然に認識させると思います。

今後ともよろしくお願い申し上げます。

投稿: おとうさん | 2006年8月 8日 (火) 午前 01時02分

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