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2005年7月28日 (木)

Wordfast

かなり以前から、フリーウェアの翻訳支援ツール「Wordfast」の存在は知っていましたが、なかなか手にして使うという気が起きませんでした。それと言うのも、オンラインの無料の機械翻訳を幾度か使用してみたり、市販の富士通のアトラス、Trados、Transitなどのセミナーを受けたり、さらには実際に翻訳の仕事に1~2回使った体験があるなど、機械翻訳や翻訳支援ツールの長所・短所を、翻訳者ではない一般の人たちよりは憖っか知っていただけに、Wordfastも(あまり役に立たない意味では他の翻訳支援ツールと)同じだろう程度の気持ちでいたのです。しかし、過日以下のサイトを訪れ、初めてWordfastがマイクロソフトのワープロソフトであるWordにアドインするテンプレートだと知り、急に興味を覚えたのでした。何故なら、ここ1ヶ月取り組んでいるCTも、Wordfast同様にWordにアドインするテンプレートだからです。
http://www.trustwords.com/wf/

上記のHPのオーナーである山田聡氏は、Wordfastのマニュアルを和訳した人であることを同HPを訪問して初めて知りました。そこでWordfastをパソコンにインストールした7月25日に、山田氏の掲示板に以下のような書き込みをしたのです。

http://www.trustwords.com/freecgi/TreeBBS/index.cgi?bid=1&page=1

1. WordfastとCT [サムライ] 2005/07/25 07:31:24
最近、Wordfastの存在を知ったサムライと申します。翻訳の世界に入ってから6年になりますが、最近は繰り返しの表現が多いマニュアルタイプの仕事が増えてきたことから、翻訳の仕事を効率的に行う術を模索してきました。そうした中で出会ったのが、特許翻訳者の水野麻子氏のCTという翻訳術です。これは“フォートリーディング”という画期的な手法を採り入れた翻訳技術であり、これにWordのマクロを組み合わせたもと言えば理解が早いと思います。CTについて個人的な感想を拙ブログに書きましたので、以下を参照願います。
http://pro.cocolog-tcom.com/edu/cat3631693/index.html

また、前々から気になっていたWordfastもWordのマクロと知り、CTと組み合わせたら何かが生まれるかもしれないと閃き、昨日Wordにインストールしてみました。これから本業の合間に山田さんに翻訳していただいたマニュアルを片手に、少しずつ操作方法を覚えていきたいと思います。分からない点や疑問点が出ましたらここの掲示板を訪問して問い合わせさせて戴きたいと存じますので、御指導のほど宜しくお願い申し上げます。

サムライ拝
http://pro.cocolog-tcom.com/edu/

それに対して、山田氏から以下のような回答を頂いています。

2. Re: WordfastとCT [山田聡] 2005/07/25 15:56:40
サムライさん

CTというのは、私には未知の世界ですが、Wordのマクロ同士なら何か面白いことができるかもしれませんね。私はマクロの詳しいことは分かりませんが、できる範囲で協力させていただきます。

CTに関しては既に今月から翻訳の仕事に活用していますが、Wordfastに関しては1回サンプルの原稿を使って実際に走らせてみたに過ぎません。それでも、CTとWordfastを併用することによって生じるであろうメリットとして、少なくとも以下のようなものがあることが分かりました。

■グロッサリー(用語集)が基本的に共有できること。CTもWordfastもタブ区切り形式(TEXT)を採用しています。但し、Wordfastの場合、ワイルドカード機能を持たせるために"*"を使用しますので、厳密には単純に共通して使用することはできないかもしれません。このあたりについては、今後実際に使用していくにあたって確かめていきたいと思います。
■Wordfastの付録Ⅰの「セグメント分割とTMについて」に、「最初の行を翻訳し終えると、Wordfastが次の行を認識し、候補の訳文を提示することによって下訳もしてくれます」(p.100)とあります。過去の資産である翻訳メモリに、現在進行中の翻訳作業の原稿に候補の訳文がなくても、現在進行中の翻訳作業の原稿自体に候補の訳文があるケースが多いのは、翻訳者であれば体験上知っていると思います。その意味で、同じ原稿の中で後から出てくる候補の(似通った)訳文の下訳をしてくれるというWordfast機能は有り難く思います。そのWordfastの機能と並行して、CTの画期的な翻訳方式・フォトリーディングで翻訳を進めていったとしたら、今まで以上に翻訳のスピード・品質がアップするのでは、という気がしてきました。しかし、実際にある程度使い込んでみないことには今のところなんとも言えません。

その他、CTとWordfastの併用によって、さらに多くのメリットが出てくるような気がしますが、そのあたりは追々まとめて報告していくつもりです。

最後に、Wordfastに限らず他の翻訳支援ツールについても言えることですが、実際に自分で走らせてみることにより、身体で操作方法を覚えることが肝心なのですが、その点で初めて翻訳支援ツールというものに接する人たちは大変だろうなと思います。幸い、私の場合は色々な翻訳支援ツールを囓ってきましたので(どれもマスターしたとは云えず、中途半端ですが…)、今のところ山田氏の翻訳したマニュアルを理解し、Wordfastを色々と試すことが可能です。しかし、上級レベルになったら、山田氏のアドバイスが必要になるとは確実です。その折りは、山田さん、宜しくお願い致します。

Wordfast:パソコンの標準OSであるマイクロソフトのウィンドウズの牙城を脅かすのがリナックスであるとすれば、翻訳の標準翻訳支援ツール(一種の翻訳ソフト)であるTRADOS(トラドス)の牙城を脅かすのがWordfastである。

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コメント

懇切丁寧なお返事をいただき恐縮です。ありがとうございました。
さっそくIBDのソフトを検討します。

投稿: さなえ | 2005年8月25日 (木) 午後 01時20分

コメントありがとうございました。


>CT方式の購入を考えており、先日水野さんのデモンストレーションに
>参加してきました。確かに効率がだいぶ上がりそうですが、マクロも
>知らない私にも使いこなせるのか、逡巡しています。

マクロのプログラミングという意味では、私もマクロは全く分かりません(第一、マクロのプログラミングを組むことが出来ません。プログラミングの知識に関しては、昔はプログラミング言語である“Pascal”を囓り、簡単なゲームをPascalで途中まで作成できた程度です)。ただ、CTのマクロの場合、翻訳者であれば誰もが所有しているマイクロソフトのWordにインストールするだけですので(インストールの仕方はCTのマニュアルを参照)、後は水野さんのマニュアルをじっくり読み進めながら、ステップバイステップでCTを学習していけば、誰でもCTを使いこなすことができるはずです。


>法務および経済分野を一応専門としていますので、どのくらい使える
>のかそれも疑問です。

法務でも契約書関係であれば意外と「繰り返しフレーズ」が多いので使えると思います。ただ、私の場合、海外の経済誌の記事翻訳や官公庁や財団の経済関連の翻訳もやっていますが、海外の経済誌の場合はCTは訳(役)に立ちませんね。記事ごとにテーマが大きく異なってくるし、たまたまテーマが同じであっても取材の視点が非常にバラエティーだからです。ただ、官公庁や財団の経済関連の翻訳の場合、予め用語集を支給してくれることもあるので、用語の統一程度には役立ちます。

ただ、契約書の翻訳を受注することが多い翻訳者の場合、CTよりもIBDの契約書作成ソフト「DRAFTSMAN II」の検討をお勧めします。本ブログの何処かにも書きましたが、契約に関してはIBDの石上進社長は五指に入る方であり、その石上社長が生み出した契約書作成ソフトであるだけに、契約書を翻訳する現場では威力を発揮するはずです。
http://www.ibd-net.co.jp/business.html


>楽に習得できるような印象を受けたのですが、どうでしょう?

水野御夫妻が作成したマニュアルは、実に痒い所に手が届くマニュアルですので、マニュアルをじっくり読みながらCTに取り組めば、必ずCTを使いこなせるようになります。ただ、かなり分厚いマニュアルなので、焦らずゆっくりと取り組まれると良いと思います。つまり、「時間をかければ」という条件付きで、CTは“楽に学習できる”ツールであると言えるのではと思います。


サムライ拝

投稿: サムライ | 2005年8月25日 (木) 午前 06時57分

はじめまして。最初から興味深く拝見しました。古狸のフリーランス翻訳者です。CT方式の購入を考えており、先日水野さんのデモンストレーションに参加してきました。確かに効率がだいぶ上がりそうですが、マクロも知らない私にも使いこなせるのか、逡巡しています。
法務および経済分野を一応専門としていますので、どのくらい使えるのかそれも疑問です。
楽に習得できるような印象を受けたのですが、どうでしょう?

投稿: さなえ | 2005年8月24日 (水) 午後 11時10分

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