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2005年6月29日 (水)

『虚数の情緒』

b050629 太田明氏の『百人一首の魔方陣』を取り上げたので、今朝は『虚数の情緒 中学生からの全方位独学法』(吉田武著 東海大学出版会)も取り上げておきたいと思います。私はアマゾン・ドットコムにおいて、『虚数の情緒』についての書評を行ったことがあります。

きたる情報化社会の必読書

『虚数の情緒』の副題が「中学生からの全方位独学法」となっていることから、中学生向けの数学の参考書かと勘違いされかねない本である。しかし、中身を紐解いてみると、単なる中学生・高校生向けの数学の参考書の域を遙かに超えており、これからの情報化社会を生き抜くにあたって、必要不可欠なインテリジェンスを兼ね備えた百科全書派を目ざしてもらうべく、若い人たちに一読を勧めたくなるような本であることが分かる。このあたりは、吉田氏自身が自著のはしがきで「本書は人類文化の全体的把握を目指した科目分野に拘らない"独習書"である」と述べていることからも、本書が単なる数学の参考書ではないことが明らかだ。これからの情報化社会という新時代を生き抜いていくだけの、逞しい人間に成長していって欲しいと子供に願う読者は、我が子に本書をプレゼントしては如何だろうか。

無論、本書は現役の国際ビジネスで活躍されている読者にも有益な本になると思う。また、学生時代は数学か苦手だったという読者も、数学に対する苦手意識から抜け出すのに本書は格好の書となるかもしれない。ただ、何分にも本書は千ページにもなる分厚い本であり、満員の通勤電車の中で読むには躊躇するような、広辞苑なみのサイズと重さである。仕事のない休日に、のんびりと自宅で紐解くべき類の本なのかもしれない。

アマゾン・ドットコムでは、私以外にも25人の読者が『虚数の情緒』にコメントを寄せていて、コメントの内容も千差万別ですので関心のある方は目を通してみると良いと思います。印象としては、一部に例外があるものの、数学の専門家は概して『虚数の情緒』に批判的であり、私を含め、数学の素人は一般に『虚数の情緒』に対して好意的なコメントを寄せていると言えるかもしれません。

アマゾン・ドットコムの25名の方々のコメントを読んだ後も、『虚数の情緒』を子どもたちに進学のお祝いとして、プレゼントしたいという気持ちに変わりはないものの、同書はあくまでも足がかりであり、それから発展して個々の分野で先達が遺してくれた優れた書籍・論文などに取り組んでいって欲しいと願っています。某識者が、「数学が分からないのは人間ではない」と発言したことがありますが、この発言部分だけを取り上げれば、暴論だ!…という喧しい批判が外野から飛んできそうです。ともあれ、「数学が分からないのは人間ではない」という根拠について、折に触れ述べていくことが必要なのかもしれません。

ところで、筆者が『虚数の情緒』を評価している理由の一つは、黄金比およびフィボナッチ数列について、さわり程度ではあるものの、真面目に言及している点です。

最初に、黄金比については、IBDのウェブ機関誌『世界の海援隊』に発表した「幾何学のすすめ」と題する寄稿に、私は以下のように書いたことがあります。

このように、黄金の三角形が秘めている神秘的な力に魅せられたが故に、エジプト人は黄金分割を秘伝中の秘伝扱いにしたのだろうし、それを受けついだピタゴラス教団の人びとも、秘伝を外部にもらさないように秘密結社の形で秘伝を大事に守ってきたのであり、その伝統が今日のフリーメーソンにも引き継がれているのだと筆者は思う。かように、数学や芸術哲学は無論のこと、鉱物学、金属学、医学、心理学など、幅広い知の全領域に思考が及ぶ百科全書派の人間だけが真に習得することの出来る、人類至高の智慧こそが黄金比に他ならないのである。ここに、古代エジプト人の「黄金比の中に宇宙の秩序が有る」という信仰にも似た確信に、筆者も同意する所以である。

続いて、フィボナッチ数列については、やはり上記IBDのウェブ機関誌『世界の海援隊』に発表した「メタサイエンスのすすめ」と題する寄稿に、以下のように書いたことがあります。

フィボナッチ数列は、動物や植物の生長パターンだけではなく、株・金(ゴールド)相場など、人間の営みである経済活動からも見出すことができる。それを裏付けるように、フィボナッチ数列を謳い文句に相場で儲けようと盛んに宣伝しているサイトが多い。しかし、そうしたサイトの大半は、フィボナッチ数列を餌に一儲けしようとする山師たちが見よう見まねで予想屋的な商売をしているだけに過ぎないようだ。フィボナッチ数列とは、単に金儲けに使うようなケチなものではなく、秘伝の部類に属するものである。現在の日本はモラルも倫理も劣る人間で支配されていることから、そうした連中にフィボナッチ数列を公開することはタブーなのかもしれない。しかし、そうした危険性はあるものの、21世紀科学の方法論として絶大とも言える威力を持っているのがフィボナッチ数列であることも確かである。そして、日本もフィボナッチ数列に習熟していくことが、21世紀を生き延びるためにも不可欠になる。本稿に目を通した読者の中から、フィボナッチ数列、メタサイエンスに関心を抱いた読者が一人でも出現したとすれば、筆者冥利に尽きるというものだ。

黄金比、フィボナッチ数列、メタサイエンス等について、さらに深く追求してみたいという方には、『間脳幻想』(東興書院)および『宇宙巡礼』(東明社)を推薦します。

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