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2005年6月30日 (木)

翻訳という職業に明日はない?

2日前の27日夕方、IBDのI社長と久しぶりにお会いした際、特許翻訳を含めた翻訳業界の将来について話題になりました。まず、Trados(トラドス。翻訳業界では代表的な翻訳支援ツール。一種の翻訳ソフト)に代表されるIT分野の翻訳については、翻訳者は不要になり、翻訳支援ツールで大方済んでしまうだろうという点で意見の一致を見ました。次に契約英語ですが、I社長は長年にわたり国際契約のデータベース化に取り組み、さらにはDraftsmanⅡという国際契約書の作成用翻訳ツールを開発し、販売しているという体験を踏まえ、ビジネス文書、殊に国際契約書は翻訳支援ツールで大体間に合うという時代が遠からず到来すると予測されています。そして、私の先輩の弁理士Sさんが、特許翻訳の将来性について悲観的な見解を示しているという点についても話題になりました。特許英語の翻訳について、どうして弁理士S氏が悲観的な見通しを立てているかと言えば、10~20年の後には翻訳ソフトに取って代わられるだろうと予測しているからなのです。S氏は都内にS事務所を構えている他、北京にも駐在事務所を開設しており、4名ほどのスタッフを抱えています。そして3年ほど前から、中国人のスタッフに中国語で特許出願用の書類を書かせ、それを翻訳ソフトで日本語に粗翻訳し、その粗訳を日本人のスタッフが校正すれば、特許出願費用が低く抑えられると目論んだのです。しかし、結局中日翻訳ソフトか使い物にならず、そのプロジェクトは撤退する方向で現在は動いているとのことでした。ただ、あくまでも現時点における中日翻訳ソフトが使い物にならないというだけの話であり、これが10~20年後も中日翻訳ソフトが依然として使い物にならないとは考えられない、そこそこは実用に耐えるものになるとS氏は予測しています。この点で、IBDのI社長も同意見でした。

翻訳関係の本や雑誌を読むと、(実力のある)特許翻訳者はひっぱりだこであるとしか書いていません。確かに、現時点に限れば本や雑誌に書かれていることは正しいのですが、将来的には特許翻訳者と言えども、必ずしもバラ色の未来ではないということを記憶に留めておくべきでしょう。私の場合、子どもたちが巣立つまであと最低13年は、現役の翻訳者として頑張らなくてはならないことから、このまま翻訳者を続けて良いものかどうか悩むことが時折あります。時には、このまま翻訳者を続けるよりは、翻訳関連のビジネスなどの事業に切り替えた方が良いかなと思う今日この頃です。

ところで、特許翻訳を通信講座で受講中という私に対して、S氏は以下のようなアドバイスをしてくれました。他の特許英語の翻訳を希望している方にも参考になればということで、以下にS弁理士の言葉を列記しておきます。

●単に翻訳するだけでは足りず、世界各国の特許法と条約の概要学習する必要がある。
●他の分野の翻訳と特許翻訳が際立って異なる点は「クレーム」にあり、特許権の範囲を決める最も重要な部分であると同時に、異常に長い文章であるので、慣れることが肝心である。

現在考えていることは、本・雑誌等の出版翻訳、映画などの映像翻訳など、当面は翻訳ソフトが使えない分野を中心に、現在の翻訳力、より正確には日本語力を磨くことに専念し、同時にCTなどを導入するとにより、産業翻訳のスピードと品質をアップさせていくことを考えています。さらには、特許など新たな分野も開拓していけば、あと10年くらいは現役の翻訳者でやっていけるのではと思います。

なお、翻訳ビジネスについて関心のある方は、私が作成したホームページの以下のURLを参照願います。翻訳ビジネスについて、独特のビジネスモデルをお持ちの方、一緒に事業の夢を語り合いましょう。ご連絡ください。
http://dappan.hp.infoseek.co.jp/dojo/profile/business.htm

翻訳管理スタッフ募集契約書の翻訳経験があり、外注翻訳者の翻訳をチェックできる人を求めます。

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